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奈良簡易裁判所 昭和38年(ろ)108号 判決 1963年11月11日

被告人 ○(昭一九・二・二生)

主文

本件公訴を棄却する。

理由

被告人に対する本件公訴事実は、「被告人は昭和三七年一二月二一日午後七時一五分頃大阪府公安委員会が道路標識によつて車両の通行を禁止した場所である大阪市南区南空堀町一番地先付近道路において前方の道路標識の表示に注意し車両の進行が禁止された場所ではないことを確認して運転すべき義務を怠り、同所が右通行禁止の場所であることに気づかないで普通貨物自動車大四ふ○○○○号を運転通行したものである」というのである。

ところで、本件記録中の奈良家庭裁判所裁判官作成の検察官送致決定書および被告人の当公廷における供述によれば、被告人は昭和一九年二月二日生れの満二〇歳に満たない少年であることが明らかである。また本件記録によると奈良家庭裁判所裁判官は本件を故意犯として検察官に送致し、送致を受けた検察官は取調の結果本件公訴事実のように過失犯として公訴を提起したものであることが認められるが、本件公訴事実に対する法定刑は道路交通法第一一九条第二項で罰金刑のみが定められているので、本件公訴事実と家庭裁判所から検察官へ送致のあつた事実、即ち故意犯の事実との間に公訴事実の同一性は認められるとしても、少年法第二〇条の規定に照らすとき、本件公訴事実については家庭裁判所から検察官への送致決定はなかつたものとみるべきであり、且つ少年法第二〇条および第四五条第五号によると公訴提起の余地自体を許さないものであると解さなければならない。従つて本件公訴提起の手続は前記少年法の規定に違反したもので無効であるといわなければならない。

よつて、刑事訴訟法第三三八条第四号にのつとり主文のとおり判決する。

(裁判官 鎌田泰輝)

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